日本人の死因のざっくり半分は血管が原因【校長×医師】つかさ内科院長稲島司さん① |

日本人の死因のざっくり半分は血管が原因【校長×医師】つかさ内科院長稲島司さん①

2020.3.17

みらいスクール校長菅野との教育対談シリーズ。今回は「つかさ内科」院長の稲島司先生です。
 
稲島先生は東京大学医学部附属病院に勤めていた医学博士で、医療に関する著書も多数出版。ギフテ!「キッズドクター体験(循環器内科)」の先生として、子ども達に医療の世界を教えていただいています。
 
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現代日本人の死因の半分は血管が原因?実は大事な「血管」のお話。

菅野

初めて先生とお会いしたのは東京大学にご勤務されていた時です。
 
寿命の話をお聞きしたのがすごく面白くて。今まで「血管」ってあまり意識してなかったですが、言われてみれば血管って重要だなと初めて思いました。
 

稲島

現代の日本人の死因の1番はがん、2番心疾患、3番肺炎、4番脳血管疾患です。
 
2番の心疾患の多くは実際には心筋そのもの由来の病気というより、心臓のまわりの「冠動脈」の病気で、その背景は動脈硬化です。4番目の脳血管疾患も脳そのものの病気というより、脳に血液を送る血管の病気。これも動脈硬化です。3番の肺炎も、いわゆる肺炎だけじゃなくて、脳卒中の人が嚥下(えんげ)できなくなるから、肺炎を起こすものが多く、これも血管が原因です。
 
だから現代日本人の死因のざっくり半分は血管が原因と言っても良いでしょう。

   

 

菅野

合計するとがんより血管の原因の方が多いですね!
 

稲島

そうです。で、がんを完全に予防するのは不可能です。だけど血管は、予防が確立しています
 
コレステロール、血圧、尿酸、血糖値、中性脂肪などをコントロールすれば、病気のリスクを減らせます。つまり、現代人の死因の半分は克服できる可能性があるんですよね。

菅野

なるほど。死因の半分が予防できるってすごいですね。
 

稲島

血管の病気は、命を落とさなくても、脳卒中を起こしたら片足が動かなくなるとか、心不全になると、例えばダッシュした後のような息苦しさが寝ている間も続くとか、様々な生活上の不都合が出てしまう。だから、血管の病気を予防するって大事なんですよね。

 

菅野

僕の知っているお医者さんの中でも、稲島先生は予防にかなり力を入れられている方だと思います。「食事」と「運動」の本も出版されていますね。
 
※稲島先生のご著書はこちら

 

稲島

医者の仕事は「診断」と「治療」の2つが大きな柱になっています。だけど、本来は、予防→診断→治療→リハビリです。
 
みんな「予防が大事」とはいうけど、業務として取り組んでいる医師が実はあまりいないです。
 
また、健康番組とかでエビデンスのない情報がよく流れますが、根拠があって科学的に証明されている予防方法をちゃんと伝える人が少ないと感じます。それが昔から歯がゆいです。
 

菅野

稲島先生のキッズドクター体験会は、冒頭に先生から聞ける「健康に関するウソ・ホントの話」も人気です。自分たちが普段いかに、根拠のない健康情報を信じてしまっているかが分かります。

 

稲島

「こういう生活習慣だとガンのリスクが高まる」とか、「こういう食生活をすると心血管疾患のリスクが減る」というデータは確かに集まっています。ただ、「なぜそうなるか?」という途中の理論の部分は解明されていなかったりします。
 
よって「この食事の『どの成分』が効くんですか?」といった疑問には現時点では答えられないことが多いのです。
 
実際、効果が実証された成分は少なく、逆に効果が見込める食材は多く報告されてきています。何故かはまだわからない部分もあるけど、取るべき行動は徐々にわかりつつある、というのが現状ではないでしょうか。
 

「医療」と「リハビリ」の距離が近い珍しいクリニック

菅野

「つかさ内科」は医療と介護、リハビリテーションの距離が近いのが特徴ですよね。一般的には医療と介護って保険も別ですし、距離があると感じます。
 

稲島

そうですね。

 

菅野

リハビリのプロのスタッフと、医療のプロのお医者さんの両方に見てもらえるのは患者さんにとってのメリットが大きいと思います。
 

稲島

多くの施設で、リハビリスタッフは基本的に医療のど真ん中とは直接に関わっていないことが一般的です。
 
でも、リハビリに通う高齢者は大方、病気を持っていますし、そもそもリハビリは医療の重要な側面です。ところが看護師や医師がいないと、例えば血圧が一過性に高いとか微熱のある高齢者がリハビリをやっていいかの判断がに迷うことがあります
 
もちろん中止基準というのは設けられていますが、柔軟に対応する必要があります。そういった際に判断に迷う、または利用者と医療者の板挟みになる、ことなどによってリハビリスタッフって医療との間に挟まれるストレスが多いんです。
 
うちのリハビリは非常にわかりやすくて、本人と家族の希望があれば、軽微なリスクであればリハビリは施行するようにしています。
 

菅野

なるほど。
 

稲島

僕が責任取るから、リスクとってでも運動しましょう、と言っています。

 

寝たきりで過ごすわけでなけれれば、転倒などのリスクは必ずあるはずです。その代わりというわけではないですが、当院での診察と家族の面談は定期的に行うようにしています。
 
リハビリには当然転倒などのリスクはあるし、途中で熱出したとか、血圧が高いとか、気持ち悪いとか出るかもしれない。そういう場合は僕と看護師さんが対応するから、リハビリスタッフはもちろん細心の注意は払ってもらいますが、少なくとも責任を取らされるという点は気にせずに業務にのぞんでいただきたいのです。
 

菅野

なるほど。医療とリハビリテーションのつながりが弱いと、リスクを取らない選択をしがちになりますよね。だけど、つかさ内科は医療側のリスクが取れるので、リハビリに集中できて、結果的に患者さんも回復を実感しやすくなるのですね。
 

第2回 「循環器内科は取得しなければいけない『手技』が多い診療科」に続く

 

 

稲島司(いなじま つかさ)さんプロフィール

医学博士、内科医、つかさ内科院長。東京大学医学部附属病院地域医療連携部助教・循環器内科を経て、2019年4月につかさ内科を開業。総合内科専門医。循環器専門医。認定産業医、認定健康スポーツ医。野菜ソムリエ。心臓カテーテルをはじめとする循環器内科専門診療にあたるほか、外来診療などで生活習慣病の予防や改善に務める。「医師が実践する 超・食事術(冬樹舎)」など複数の書籍の執筆も行っている。
 

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まわ

まわ

京都市出身。大学卒業後に出版社を経て広報の道へ。中小企業診断士、販売士一級の資格を保有。最近、趣味で家庭菜園を始め、自分で育てた野菜でサラダを作るのが目標。