みらいスクール校長の菅野と教育の知見の深い方々との、教育をテーマにした様々な対談をご紹介していきます。育児や教育へのヒントになれば幸いです。
今回は、ギフテ!の人気企画「巨大壁画アートを制作!キッズアーティスト体験」のミヤザキケンスケ先生です。

絵を描くことから子どもが学べることなどをお聞きしました。
大きな絵はサッカーのような達成感がある
菅野
ギフテ!でアート体験をやりたいと思っていましたが、先生となかなか出会えなかったんです。僕は、ただ1枚の画用紙に絵を描くのではなく、できれば「みんなで大きい絵を一緒に作る」がやりたかった。画用紙に絵を描くだけなら、家や学校でできますからね。
そこで、学研の方が紹介してくださったのがミヤザキさんでした。ミヤザキさんは世界のいろんな場所に行き、現地の人たちと一緒に巨大な絵を描かれていて、ぴったりの先生だと思いました。
ミヤザキさんが大きな絵を描き始めたきっかけは?
ミヤザキケンスケさん(以下ミヤザキ)
僕は高校から美術を専攻して、大学でもずっと油絵を描いていました。その頃から「大きい絵の方が人に大きなインパクトを伝えられるな」と思い始めていました。ただ、大きい絵は1人で書ききれない。そこで他の人に手伝ってもらいながら一緒に大きな絵を描き始めたのがきっかけです。
本来、画家は自分の描きたい絵を一人で描くんですが、みんなで協力して絵を描くと、サッカーみたいに、団体競技で感じたような達成感があります。それがいいな、自分に合っているな、と思います。

アートとしての完成度にこだわる
菅野
大まかなアウトラインはミヤザキさんが描くけど、そこに少しずつ他の人の感性が入ることで、化学反応が起きていく。それが形として残るのがアートのいいところですよね。
ミヤザキ
もともと僕にも「自分が描きたいものを描きたい、異物を入れたくない」という気持ちは当然ありました。人に描いてもらいながら、これを「自分の作品」と言っていいのか、初期は悩みました。ただ、途中から、僕自身の描き方が変わって、人が描いても自分が描いたような絵に仕上げることが可能になりました。
例えば、色の塗り方は基本ベタ塗にするとか、最初に大きな面を塗って、そこからだんだん細かい面を塗る作業に移していくとか。今では、国籍・年齢問わず、どんな人が参加しても同じクオリティが保てるようになりました。
菅野
ギフテ!に参加する子どもは当然、絵のレベルに差がある。でも、体験中に絵が上手く描ける子を見ながら、「こうして書けばいいんだ」と参考にして、うまく描けるようになるんですよね。そういうのが伝わっていくのがみんなで描くいいところの一つ。

ミヤザキ
面白いなと思うのが、みんなで絵を描いていて、一部クオリティの高い部分ができあがると、そこは誰も絶対上書きしないんですよね。だから、子どもと描く時も、最初はけっこうぐちゃぐちゃに描くんですけど、中心部分にクオリティの高い絵を描くと、それがどんどん広がっていくんです。
「あ、このレベルで描いていくんだな」というイメージが沸くんでしょうね。このイメージがないと、単なる色遊びで終わっちゃう。
子どもたちの成長につながる「気持ちのいい瞬間」
菅野
ミヤザキさんは最初に色の授業もしてくれます。
相性がいい色や悪い色の知識をインプットしてから絵を描くので、色彩のアンバランスさがなくなる。
ミヤザキ
子ども達の絵を見ていると、一定レベルまでは描けるけど、そこからクオリティを上げるにはどうしたらいいかわからない、という子がすごく多いんです。
だからつまずいている部分を「こうしたら絵がよくなるよ」というのを教えてあげます。
例えば、人の顔を描く時は、目に光を入れるとぐっとよくなるんです。その作業を子どもにさせてあげると、「今すごく絵がよくなった」というのが子どもにわかるんです。
絵は下塗りとか面倒な作業がありますが、最後の最後、気持ちのいい瞬間を子どもにやらせてあげると、絵のクオリティが上がる瞬間を体感できて、成長するんですよね。
►この対談は全3回でお届けします。
・5/10(金)更新 「「今、絵がすごくよくなった」という瞬間を子どもに体験させる」
・5/14(火)更新 「自分が描きたい絵をかくのと、誰かのために描く絵は全く違う」
・5/17(金)更新 「「楽しかった」で終わらせない。「良い絵が描けた」と全員が思える体験に」
第二回 「自分が描きたい絵をかくのと、誰かのために描く絵は全く違う」に続く
ミヤザキケンスケさんプロフィール

筑波大学修士課程芸術研究科を修了後、ロンドンへ渡りアート制作を開始。Supper Happyをテーマに、見た瞬間に幸せになれる作品制作をしている。
2006年から行っているケニア壁画プロジェクトでは100万人が住むといわれるキベラスラムの学校に壁画を描き、現地の人々と共同で作品制作するスタイルが注目される。現在世界中で壁画を残す活動「 Over the Wall 」を主催し、2016年は東ティモールの国立病院へ壁画を制作。2017年はUNHCR協力のもと、ウクライナのマリウポリ市に国内難民のための壁画を制作した。

まわ

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