みらいスクール校長の菅野と教育の知見の深い方々との、教育をテーマにした様々な対談をご紹介していきます。育児や教育へのヒントになれば幸いです。
今回は、ギフテ!の人気企画「巨大壁画アートを制作!キッズアーティスト体験」のミヤザキケンスケ先生です。
この対談はこちらの続きです。
絵は目的がある方が良い
菅野
ミヤザキさんは1年に一回、海外で壁画を描かれていますが、基本は現地の人と一緒に描くんですよね?
ミヤザキケンスケさん(以下ミヤザキ)
そうです。壁画は現地に残るものなので、外国人の僕が一人で描くよりも、現地の人と一緒に描いた方が地域に根付くんですよね。昨年は、エクアドルにある女性刑務所内の壁に描きました。
そこは子どものいるお母さん達が収監されているとこで、子どもは生まれてからずっと、刑務所内の景色しか見たことがないんです。だから明るい絵を描いた方がいいなと思って、女性受刑者に一人一輪ずつ花を描いてもらいました。
▼エクアドルの刑務所内の壁画 撮影Over the wall

菅野
絵って目的があって描いた方がいいんですよね。ギフテ!でも昨年7月にエクアドルに贈るために描く」という体験をやりましたが、誰かに贈るとなると、真剣度が変わってきます。
ミヤザキ
そうですね。自分が描きたい絵をかくのと、誰かのために描く絵は全く違いますからね。
他人と同じことをできる能力よりも、自分の個性を伸ばすことが大事
菅野
絵を描く時に、日本と海外の子どもとの違いはありますか?
ミヤザキ
日本の子は丁寧ですし、絵が上手いです。美術の授業をちゃんと受けているので、絵の具もちゃんと使える。海外では絵具が使えない人も多いです。
菅野
海外に比べると日本は情操教育(感情や情緒を育み、創造的で、個性的な心の働きを豊かにするためとされる教育)をけっこう時間割いてやるんですよね。絵とかリトミックとか。
ミヤザキ
国語や算数などは必ず答えがあるけど、絵には答えがない。10人いたら10通りの表現があっていい世界。だから美術の授業って必要だと思うんです。正解を求めて描くのではなく、自分が思った通りに描いて、評価してもらえることが大事だと思っている。
他人と同じことをできる能力よりも、自分の個性を伸ばしてほしいですよね。
菅野
大人になると、何かを表現したり、デザインしたりって誰しもやること。表現の部分はAIではなく、人間が担うべきところですよね。
しかも絵というのは世界共通言語。欧米の教育でも「STEM」から「STEAM」に変わっています。科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)、そこにアート(Art)が加わりました。
論理的な考えが出来ても、現実とつなぐためには表現する能力が必要だからです。
だから、ギフテ!のアーティスト体験は、プロの画家になりたい子だけじゃなくて、他の仕事をするうえでもいずれ養分になる体験だと思います。

►この対談は全3回でお届けします。
・5/7(金)更新 「「今、絵がすごくよくなった」という瞬間を子どもに体験させる」
・5/14(火)更新 「自分が描きたい絵をかくのと、誰かのために描く絵は全く違う」
・5/17(金)更新 「「楽しかった」で終わらせない。「良い絵が描けた」と全員が思える体験に」
第三回 「「楽しかった」で終わらせない。「良い絵が描けた」と全員が思える体験に」に続く
ミヤザキケンスケさんプロフィール

筑波大学修士課程芸術研究科を修了後、ロンドンへ渡りアート制作を開始。Supper Happyをテーマに、見た瞬間に幸せになれる作品制作をしている。
2006年から行っているケニア壁画プロジェクトでは100万人が住むといわれるキベラスラムの学校に壁画を描き、現地の人々と共同で作品制作するスタイルが注目される。現在世界中で壁画を残す活動「 Over the Wall 」を主催し、2016年は東ティモールの国立病院へ壁画を制作。2017年はUNHCR協力のもと、ウクライナのマリウポリ市に国内難民のための壁画を制作した。

まわ

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