みらいスクール校長の菅野と教育の知見の深い教育機関のリーダーとの、教育をテーマにした様々な対談をご紹介していきます。育児や教育へのヒントになれば幸いです。
校長対談2回目のゲストは武蔵野女子学院中学校・高等学校の校長先生、日野田直彦さんです。
日野田さんは民間人校長として36歳の若さで大阪府立箕面高校に着任。学校の変革をつづった『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』を出版されました。2018年4月から武蔵野女子学院中学校・高等学校の校長先生を務めています。
学校はボトムアップで変えていくもの
菅野
日野田さんは大阪府立箕面高校で4年間、民間人校長を務められた後、今年から武蔵野女子学院中学・高校に移られました。2019年に男女共学になり、合わせて学校名も変更されるそうで。まさに変革の時ですね!
箕面高校をボトムアップ型で改革された様子はご著書で読みました。先生や生徒との対話を重視されていますよね。
日野田
武蔵野でも生徒たちにどうやって学校を変えたらいいかを考えてもらっています。その一つが学校説明会。
今までは生徒が説明会に全く関わっていませんでした。
説明会の来客があっても挨拶すらしない状態でした。そこで生徒に「君ら自分の後輩でいい生徒と悪い生徒、どっちがいい?」と質問しました。そしたら「いい生徒が欲しいです」と答えます。「じゃあどうすればいいかな?」と聞いたら、自然と生徒が手伝い始めました。掃除も一生懸命、やるようになりました。
掃除も「やりなさい」とは一言もいいません。ただ「あとでどうなるか自分で考えましょう」とは言います。生徒も自分の後輩にはいい人に入って欲しいと思っているのです。
菅野
生徒に自主的に考えさせたのですね。
日野田
学校の運営は生徒と一緒にやっていくのがベストだと思っています。結局は全員がチームにならないと、強くならないですよね。
先生と生徒という関係では対立構造が生まれてしまいます。生徒たちがオーナーシップを持って決断し、行動する。私たちはあくまでサポート役。学校はそういったチャレンジの場であった方がいいと思います。
部活ってどうなる?
菅野
今後、学校の部活動が少なくなると言われていますよね。僕は部活動の時間が少なくなれば、代わりに社会に触れる機会が増えるといいなと思っています。
日野田
部活は民業を圧迫していますよね。部活動の時間が減れば、大きなマーケットが生まれますよ。
菅野
子どもの自由に使える時間も増えますしね。
日野田
日本の部活動は毎日やるでしょう。海外ではありえないことです。
箕面高校のダンス部は、この10年間で全国一を5回受賞する、全国屈指の部活です。ただ、着任当初はほぼ毎日実施していました。ただ、世界から見れば、それは異常な状況です。特に「自分で考え、自分で足りない部分を補う時間」を持つことができない。
そのため、大人になってから自分で考えず「時間さえかければいい」というブラック企業の温床になりがちです。そのため、顧問の先生とも相談し、週3回を基本として、全国大会にチャレンジしてみよう、と少しずつ話し合いを続けました。
その結果、週3でも全国大会で優勝ができる、そして勉強も頑張れる真の「文武両道」の部活に変貌しました。
菅野
へぇー!すごいですね。
日野田
顧問の先生にも家庭を大事にしてほしかったですしね。
部活動も、生徒自らが自分たちの意思で行い、顧問は見守るだけ、が本来の姿でした。ところが、この数年、顧問が指導者や安全管理者のような扱いに変貌し、教員の職務範囲に含まれないことが「サービス」という名のもとに無制限に増えてきてしまっています。先生も生徒から頼られると断れないですからね。
また、運動会などの行事も、学習指導要領には記されておらず、学校が「しなくてはならない仕事」ではありません。いつの間にか「慣例」として実施されてきたことですが、教員の責務ではない、というのは法的な枠組みです。
菅野
確かに、運動会は昔からある学校行事ですが、今のやり方が社会に合っているのかな?とは疑問に思いますね。
日野田
日本に帰ってきてびっくりしたのが、「生徒指導」という概念があることです。
学校にもよりますが、自主自立を謳うインターナショナルスクールの一部には、「生徒指導」という概念はありません。なぜならば、各国の文化的な背景などがあるため、一律の指導を行うことが難しいためです。
これは、私が通っていた同志社国際も同様でした。同志社国際においては3つだけ約束がありました。それは、です。
ただ、自由を重んじる代わりに「自由の難しさ」を学校生活全般を通じて学ぶことができました。
第二回 「グローバル教育って何?」に続く
日野田直彦さんプロフィール

1977年生まれ。タイで幼少期を過ごし、日本に帰国後、同志社国際中学・高校に入学。同志社大学卒業後、2000年に馬渕教室入社。2008年奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。2014年大阪府の公募等校長制度に応じ、大阪府立箕面高等学校の校長に着任。着任4年で、海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果を出した。2018年より武蔵野女子学院中学校・高等学校校長を務めている。
『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』
日野田 直彦 (著)IBCパブリッシング

まわ

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